あがりさがり

会社から帰ってきてうちのアパートを見ると、ベランダの灯りから、同期女子の誰が今部屋にいるのかすぐにわかる。残業が無ければ、特に寄るところもないので真っ直ぐ家に帰る。灯りがついていない他の部屋を見ると、私抜きで飲みに行ったりしてるのかな、と良くないことを考えてしまう。何回も思い直す。そんなことはわからないし、全て被害妄想だ、私はただ私がやるべきことを半日かけてやって、作業が終わったから家に帰っただけだ、何も悪くないし、間違ってない。うちに帰るだけで生活を他人と比較するハメになるこの性格をなんとかしたい。

同期に会っても、無意味な口約束が増えるだけだ。どこか面白い場所ない?って、この辺が地元の同期に聞いたら、1人で遊びに行けるとこは少ないっすねーって言われた。そういえば私、彼氏以外に一緒に出かける人いないや。さびしい。つーかそれバレてんのか。

近頃本当に食べたいものが寿司以外思いつかなくて、金が無くなる。今日もスーパーで10巻入り1000円の寿司のパックを買って帰った。割り箸をおつけしますか、って聞かれて、いいえ、いらないです、と答えた。一人暮らしの独身女の代表的な場面として切り取られそうで、なんかおかしかった。寂しかった。

正月に録画した、おっさんずラブ6時間イッキ見スペシャルを、6時間かけて一気に見る。合間に、彼氏とのラインで暴言を吐く。書いているうちに止まらなくなって、どんどん書いて、死ぬほど後悔して、食欲が失せる。寿司を買ったことを後悔する。

おっさんずラブは、すごく面白かった。主人公の春田くんは、純粋さがもたらす人生は悲劇 というのとは真逆で、素直な子が好きだって言うから素直に生きてるだけでしょって強がらなきゃ立っていられないような場面にも遭遇したことなさそうな、純粋で素直な人で、キラキラ眩しかった。小学生の頃好きだった、おちゃらけてて鈍感だけど優しい男の子のことを思い出した。恋人の牧くんとの絡みを見てうおお……!!と1人部屋で騒ぐ。その合間に、彼氏と電話をして、たくさん泣いた。おっさんずラブを見て笑い、彼氏と連絡を取って泣いて、感情の起伏が大きくて疲れた。

社内講座の受講中、眠くて仕方なくて、手の甲をずっとつねっていたら、湿疹みたいなポツポツがたくさんできて、それを見たら気持ち悪くて、つねるのを止められなくなった。帰ってからも手の甲をマチ針で刺すのが止められなくなって、これはいよいよ変な方向に行っているなと思ったので、それを彼氏に話したら、病院に付き添ってもらえることになった。だから病院に行くまで生きなきゃいけないことになった。気分的にはいつでも死ねそうなんだけど、それは止めとかなきゃなと思った。

おっさんずラブの春田くんと牧くんの関係は、私と彼氏の関係に似ているなと思った。毎日小さな花が咲くように、本当にちょっとしたことで笑い合って、相手の迷惑になるからと言って別れて、またくっついて。彼を手放さないようにしなきゃなと思った。貴重な存在だ。

今も、頭が爆発しそうに締めつけられて、殴ってはじけたらどんなに楽か思う。目は開かないし、脳は、少しでも考え事をしようものなら、ネガティブな思想ばかり生み出すし。生きる理由なんかすぐに見失う。みうらさんの、人はいつか死ぬんだってよ の言葉が耳から離れない。