点描画

青森での最後の弾き語りライブが終わった。場所は黒石のラーメン屋さん。そこは、母とよく聴いたバンドのボーカルの方が経営するお店。そして共演者には、私が弾き語りを始めるきっかけになってくれた方。私にとっても、お客さんとして一緒に来てくれた母にとっても、なんとなく縁がある珍しいライブだった。このライブを紹介してくれた方ともちゃんとお話ができて、近年ではちゃんと挨拶を済ませることができた方だった。

弾き語りのライブ、って、なんでそんなに癒し系に偏ってるんだ?ってくらい、似通っている。下手な演奏を、でも頑張ってるからというのが理由で微笑んで見守るように聴く観客、勢いで押し通そうとするつまんないMC、お客さんの反応が薄いとすぐ身内ネタに頼ったり、なんかもう、正直うんざりだった。別に何かを変えられるとは思っていなかったけど、私が歌うのは大森さんの曲であって私の曲じゃないし、それでも、かなり多くの人に刺さる音楽だと思っていた。けど、終わってみると驚くほど手応えは毎回無かった。お客さんも出演者も、自分の知り合いの出番が終わればすぐ帰る。思ってたのと違う、だからライブに出ても出ても、尊敬できる人も友達になりたい人も見つからなかった。それは私が、他の弾き語りで出てる女の子みたいに可愛くないから?自分の曲じゃないから?地元の人間じゃないから?私が好きな音楽のことは、聴いてもらえればわかってもらえると思ってたけど、アマチュアは、というか大森さんの感じを見ていると多分プロでも、というかそもそも音楽自体、コンセプトから何から全部説明しないとわかってもらえない、聞けない音楽をシャットアウトするのは全員が持つ自由で、だからライブに出る度に人前で発表する意味とか、オリジナルを作る意味とか、音楽ってなんだろうとか、そんなことをぐちゃぐちゃ考えていて。それでもやっぱり、ドン引きされたとしても、私は私がつまらないと思うものはやりたくなかったから、最後まで大森さんの曲を歌った。自分の中で、弾き語りでライブに出て感じた違和感やイライラした気持ちと、たまにいる認めてくれる人の気持ちや場所を提供してくれている人への感謝の気持ちのバランスが取れなくて、人に対して素直な態度が取れなくなるくらいなら、自分の自己顕示欲のために人を振り回すのはやめよう、と思った。

バンドの人間関係がこじれて弾き語りを始めて、嬉しいことも嫌なこともたくさんあった。大森さんも、大森さんはプロだからそんなのは本当に畏れ多いけど、私と似たようなことで悩んだり悲しくなっているように見えたことも何度もあった。私はアマチュアだし、自分の本業じゃないからすぐやめれるけど、プロで毎日こんな感じだったら本当につらいだろうな… 色々言いつつやめない大森さんは本当にすごいな、と尊敬の気持ちが増した。結局、わかる人には伝わるし、わからない人には一生受け付けないんだろうし、音楽は万人のものであっても、言葉や人種みたいに、自分にとって普通のものしか日常生活の中には置いておけないのかもしれない。

あとは!!オリジナルやらないの?っていうのも嫌だったなぁ… なんでそんなにオリジナルに価値を置くの?オリジナルって言い張っても、どう聴いてもあのバンドのあの曲のパクリだろみたいなのたくさんあるし、全部同じコード進行で同じ展開でもオリジナルだから偉い、みたいなさ。ジャズやクラシックは過去の作品をスタンダードとして大事にしてるのに、なんでポップスは自作することにこだわる人が多いんだろう… そういうのはイチイチ言われるのもめんどくさいし、それって要は今日の演奏の感想がそれってことでしょ?本当に音楽聞く耳無いんですね、って感じだ。

ついつい悪態をつきがちな私だけど、それでも今日のライブは結構頑張って大事にしたよ。演奏中のチェキも撮ってもらって、しかもそれをいただいてしまったし。優しくしてもらったのは本当だし嬉しかったこともあったし、呼んでもらえるだけありがたいってことも本当はわかってるし、でも、でも、、、みたいに毎回なっちゃうので、やっぱり今後しばらくはライブに出ないことにしよう。だから何か、自分の発表欲を満たせる音楽以外の何かを見つけたい!必要以上に他人を嫌ったりせずに済む何か。でもそれよりまずは、向こうに行った先での生活基盤を整えることから、だな…