性はグラデーション

会社の同期のひがきさんがバイセクシャルというのを周囲の人たちは割と知っていて、ひがきさんに狙われている同期の男の子もそれを知っている。自分が狙われていることも知っている。そして標的にされている彼は、明らかにひがきさんからの好意を迷惑がっている。私はひがきさんから、彼に対する好意が募る一方で、彼の態度が日に日にそっけなくなっていくのが悲しいという、女子高生ばりの片思いでつらい日々の心情を、主にLINEにて聞かされていて、おっさんずラブの内容を思い出していた。女子高生が片思いばかりしている、というのは私の偏見ですね。すみません。

私が一番初めに感動したのは、主人公の春田が幼馴染のちずちゃんに、男性である上司から迫られていることを告白する場面。ちずちゃんは、春田みたいなやつを好きになってくれる人なんて貴重じゃん!大事にしなよ、と真顔で言う。その発言の意図には、男から好かれるなんてかわいそう、気持ち悪い、という不快な感情は一切含まれてなくて、性別関係なく「春田を好きになった人」として、その上司のことを捉えている。ちずちゃんだけでなく、このドラマの登場人物の中に、同性愛者を馬鹿にするような存在は登場しない。みんなどういう風に育ってきたのかわからないが、男性同士のカップルを普通のカップルとして扱うのだ。同性愛に対して一番戸惑っているのは主人公の春田だったが、最終的には牧くんと付き合うことになるし、迫ってきた上司に対する尊敬の念は最後まで無くならなかったし、春田も結局ちゃんと受け入れて、みんなとの仲を壊さないような行動を貫いていて、何が言いたいかというとドラマ面白かったなーということだ。とにかく登場人物がみんないい人なのだ。春田に迫る上司も、仕事の場面では上司としての姿勢は一切崩さないし、セクハラに発展することも無かった。春田への片思いがバレて離婚することになってしまった上司の奥さんもいい人で、別れた夫の片思いを応援してくれるのだ。上司と部下、同僚、夫婦、幼馴染、恋人、先輩と後輩、人間関係の呼び方はたくさんあるが、要は人と人が関わり、その関わりがまた別の誰かと関わり、みんなそれぞれが素直で良い人であれば、関係の名前は変わるかもしれないが、関係そのものは終わりにならない。現実は設定された人格で生きてるわけじゃないから、意地悪な人もいて卑屈な人もいるけど、私だけはそうならないようにしたいと思う。自分が死ぬまでは、できれば何も終わらせたくない。全部保留で終わっちゃうかもだけど、気持ちだけは持ってていたい。

だから、ひがきさんの片思いがうまくいかないのは、そもそも人として好かれてないっていうのが致命的なのでは……… なんてこと本人には言えない(嫌われていることはうすうす感づいてはいるらしい)ので、ひがきさんからの長文LINEに対して適当な返事を返す私でした。