チャンジャ

私はただの社会人なので、誰かと分かり合えなくても、わからないなら死ねばいいで済ませていいんだよな。歌手じゃないし、自分の思想を売ってお金をもらってるわけじゃないから。それでも、なんとかしたかった。彼女に、自分には到底理解が及ばないような人間と付き合うことがどれだけ有意義で楽しいことか、他人を、自分だけの偏見で築き上げた枠に嵌めることの無意味さを、わかってほしかった。彼女の言葉に頷き続けていれば友達でいられたかもしれないけど、限界だったんだ。最近読んだ自己啓発本に、他人軸ではなく自分軸で生きられるようになったら自分の意見を言いたくなる、それを言った結果離れていく人はいるだろうけど、そんな人は所詮そんなものなのだ、そのままのあなたを愛してくれる人に必ず出会えるって書いてあった。まさか彼女が、そうなってしまうとは思ってもみなかった。彼女にとって私は、弱くて馬鹿で、すぐ他人に依存して縋るようなかわいそうな人間としてしか映っていなかったのかと思うと、悲しくて悲しくて、呆れ果てて、失望した。私は友情だと思っていたけど、それはただの同情だったのかもしれない。虚しさしかない。

女友達というのは、男とぶりっ子を嫌いにならなければいけないなんて、人間ってそんなに簡単じゃないでしょう。好きと嫌いが混在して立ち止まったり、それでも愛し愛されたいと思って傷ついたり、文章にすれば大げさに見えるけど、人を大事にするってそういうことだと思う。もし、そんな限定された狭い視野で生きないと友達ができないなら、そんなもん一生いらない。私はみんなを大事にしたい。どこかの関係を良好に保つために、誰かを犠牲にして悪口を言って面白がるなんて、私にはできない。

私は頑張って優しくした。今回うまくいかなったのは、大雨に降られたようなものだ。そういう風にしか人と接することができないから、浅く広くみたいな関係はできそうにない。可愛くないし。愛が重いとかいうけど、お前の愛が軽すぎなんだよ。1対1で、最後までちゃんと向き合いたかった。でも無理だった。ここまでされてもまだ好きでいるなんて、それはさすがにできなかった。できなかったから逃げることにした。

彼女の恋人のたむらさんと、団体でバス旅行に行く夢を見た。たむらさんに、最近元気?大丈夫?って聞いたら、大丈夫だよ、なんでそんなこと聞くのって、理由だって絶対わかってるくせにはぐらかすような、いつもの顔で笑っていた。その笑顔が心配なんだよ、、、うまくいかなくても、必ず幸せになってほしいなぁ。

彼女も住むこの寮から出たくて、彼氏を強引に説得して、2人で住む部屋の申し込みを済ませてきた。彼には、感情のままに勢いで行動するのは危ないから、やめたほうがいいよって言われたけど、これまでの人生大体そうやって方向転換してきたから、その癖をやめろっていうのは無茶だなと思った。彼はいつも正しい。それでもやっぱり、私だって正しい。だって、嫌な記憶が生まれた場所にいつまでも住むのはつらいんだもん。会社はさすがにやめないけど。

同期といても単に楽しいとは思えなくなってきたので、そろそろ新しいコミュニティを探し始めようかと思う。それよりまず、新生活を楽しみに待てるくらいには心の余裕を持ちたい。